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「自分の星に従え!」
なんと詩的な表現でしょうか。
この言葉はイタリアの詩人、ダンテ・アリギエーリ(Dante Alighieri)の言葉です。彼は叙事詩・「神曲」を著したことで有名であり、イタリア・ルネサンスの先駆者とも言われています。しかし、彼の肩書は詩人だけではなく、「哲学者」「政治家」とあり、実は文学界以外でも幅広く活躍していた人物です。
今回はそんな彼の遺した詩的な言葉と哲学的な考え方を、英語表現を交えながらご紹介したいなと思います。
目次
これがダンテの名言の数々だ
The secret of getting things done is to act!
「物事を成し遂げる秘訣は、行動することだ!」
以前ご紹介したゲーテの言葉にも、「実行」という概念が核として存在していました。いつの時代も、そういった考え・言葉が人々の心を動かしたのでしょう。
is to actと、不定詞を使っているのが個人的には印象深いです。actingでも意味は通じるわけですから。おそらくこれは、私見ですが、発音したときの強勢を意識したのかな、と思います。to actと2語に分けることによって、言い方によってはそれぞれに強勢をおくことができます。そうすると、actingとひとかたまりにしてしまうよりも、より一層「これが大切なんだよ!」という彼の意思を強調させることができるのではないでしょうか。
どんな名言に触れても思うのですが、その言葉そのものももちろん、諸外国語から英語への訳、さらには日本語への訳が非常に秀逸だなあと感心してしまいます……教訓的な部分以外にも、学ぶべきところがたくさんありますね。
Pride, envy, avarice – these are the sparks have set on fire the hearts of all men.
「自負、嫉妬、貪欲。これらは人の心に火を放つ火花である」
物事を実行に移すためには、まあ何事もそうですがきっかけというか火付け役が存在するわけです。ダンテはその火付け役をこの3つであると言ったんですね。
確かに、自分の得意なもの(自負)や他人に負けたくないという気持ち(ある意味これも嫉妬ですよね)、こういう風になってやる!と目標に向かっていくこと(貪欲)はよくある「きっかけ」や「理由」の中に組み込まれているものですよね。
そして彼はさらにこのような言葉を遺します。
From a little spark may burst a flame.
「わずかな火花から炎が上がることもある」
小さなきっかけから、大きな成果・成功を収めることは多々ありますよね。
先の表現の火花という言葉を使ってそのまま炎に喩えてしまうこの感性……さすがはイタリア・ルネサンスの先駆者、洗練された言葉のチョイスです。
素敵な考え方を、美しく(且つ着飾らせすぎず真っ直ぐに)伝えるための言葉の選び方というのも、名言が名言たる所以なのでしょう。頭が上がりませんw
Heat cannot be separated from fire, or beauty from The Eternal.
「熱さと火は切り離すことできない。美しさと神も」
この言葉から分かる通り、彼は神を最も良いもの・美しいものと捉えていたのでしょう。イタリア・ルネサンスらしい捉えかたです。
当時は、レオナルド・ダ・ヴィンチにも代表されるように、解剖学の知識も発展しより写実的な表現というのが生まれていった時代です。絵画の世界がやはり顕著ですね。しかし、写実的な描き方をする反面、特にイタリアにおいてはその題材は聖書に関するものがほとんどでした。
実際、聖母マリアが大天使・ミカエルから妊娠を告げられるというシーンである「受胎告知」はダ・ヴィンチをはじめ、多くの画家が題材として取り上げています。また、かの有名なバチカン市国にあるしスティナ礼拝堂の天井画・最後の審判(ミケランジェロ作)も、一人ひとりの描写は非常に写実的で精密なのですが、題材が神話的なものなので、構図が大胆で現実離れしています。
そんな、キリスト教がメインの世の中。もちろん時代や年代は多少違えども、キリスト(=神)がNo.1であるという考えは万人共通だったのでしょう。
彼はその「神」に関する言葉を他にも遺しています。
Nature is the art of God.
「自然は神の芸術だ」
「芸術」という言葉をチョイスしているところから、彼は自然を美しいものであると考えていたことが分かります。先の「美しさと切り離すことができない神」が作ったものも美しい、と考えていたのでしょう。
確かに、自然現象の中には人知を超えた、それこそ神がかった光景というものがありますよね。また、彼は次のような言葉も遺しています。
Art, as far as it is able, follows nature, as a pupil imitates his master.
「弟子が師を手本とするように、芸術は可能な限り自然にならう」
No.1である神が作ったものもまたNo.1である、目指すべき最終目標である、とも考えていたのですね。芸術の師は自然である、ということでしょう。
最近はデジタルの技術も発展し、人工的だからこそ美しいものというものも多数存在します。ですが、それらも現実の人間や自然がどのように形成されているのかをきちんと理解するところから始まっているような気がします。やはり、学ぶべきものは自然の中にあるということですね。
さて、次は神様からちょっと離れたこんな名言。
You shall find out how salt is the taste of another man’s bread, and how hard is the way up and down another man’s stairs.
「他人のパンの味がいかに塩辛く、他人の家の階段の上がり下がりがいかにつらいことか、あなたにも分かるであろう」
いかようにも解釈できそうな名言ですが、私は「他人とは同じフィールドに立とうとするな」という意味を感じ取りました。なぜなら、彼は「お前の道を進め、人には勝手なことを言わせておけ」という名言も遺しているからです。
他人にとって心地のいいと思うもの(パンの味)や不便なく過ごせていること(階段の上がり下がり)は、自分にとってもいいものとは限らない、逆もまた然り……だからこそ、自分の得意とする分野で活躍したり自分が好きなものを形にしたりする方が結果も出やすく、何より自分自身が楽しく人生を過ごすことができるんですよね。
The sad souls of those who lived without blame and without praise.
「非難も賞賛もない生活を送った人々の悲しげな魂」
魂を主語に持ってくる言葉のセンスが欧米言語っぽくて非常に好きです(笑)
プラスの要素(賞賛)がないのは当然ネガティブなことだと思いますが、マイナス(非難)がないこともネガティブだと述べているのは、日本人からするとちょっと不思議に感じるかもしれません。「可もなく不可もなく」という日本語は、割と肯定的な表現で使われることが多い言葉ですしね。
しかし、最近はその表現も否定的な意味で使われることも多いようです。つまりは「0(ゼロ)」に対して、ネガティブに捉える人が増えてきているんでしょう。
それを、ダンテは今から700年ほども前に言ってのけているんです。鋭い切り口ですね。
あとがき
いかがでしたでしょうか。ルネサンス期特有の考え方から、現代にも繋がる感覚まで……多岐にわたるダンテの名言。
まだまだある彼の名言の中には、今のあなたが欲している言葉や視点が隠されているかもしれません。
また会いましょう。
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