●みなさんこんにちは、あさてつです。
昨今、ドラマや映画の中では恋愛がテーマとして取り上げられることが非常に多いですよね。ところでみなさんが「恋愛もの」ときいて思い浮かべるものは何でしょうか?
個人的には、これに勝るものはないと思っております。
「ああ、ロミオ……どうしてあなたはロミオなの?」
ご存知、シェイクスピアの名作「ロミオとジュリエット」。いがみ合う両家の娘と息子が恋におちるもその結末は……。上の一節なんかは、名言中の名言ですよね。
ということで今回は、「ロミジュリ」の中に登場する名言をご紹介!16世紀から長く語り継がれる名作の中には、今では見かけない英単語がたくさん使われています。ロミジュリの世界を堪能しながら、英語界の「古語」を学習していきましょう!
目次
これがシェイクスピアの名作英語表現(古語)だ
「ああ、ロミオ……どうしてあなたはロミオなの?」
先ほどご紹介したこちら、英語では
O Romeo, Romeo! Wherefore art thou Romeo?
と言います。その名字(=家柄)が自分の家と対立してしまっているから私たちは愛せないの……なんでそんな名前なの?という切ない気持ちが込められているセリフですね。
さて、後半を見てみると、見慣れない単語が並んでいますね。これらが「古い英語表現」です。
WhereforeはWhyの意味、artはare、thouはyouです。つまり、
Wherefore art thou Romeo?
↓
Why are you Romeo?
ということなんですね。
thouという単語は、現在は祈りなどでの神への呼びかけの時に用いられる単語です。所有格はthyやthine、目的格はtheeとなります。you – your – you – yours の形に当てはめてみると、thou – thy – thee – thineといった感じでしょうか。
作中にはこの単語がたくさん使われていますので、ちょっと知っておくと読みやすくなるかもしれません。また、動詞もareがartになったように、-stや-estがつくようになります。
have→hast will→wilt など
これに続く、
「お父様と縁を切り、その名を捨てて。それが無理なら、せめて私を愛すると誓って」というセリフも、英語の原文では
Deny thy father and refuse thy name: Or, if thou wilt not, be but sworn my love,
となります。ご紹介したばかりのthyやwiltが出てきていますね。
「あの窓からこぼれる光は何だろう?向こうは東、とすれば、ジュリエットは太陽だ!」
こちらは、「あなたはどうしてロミオなの?」と窓辺で嘆くジュリエットを見つけたロミオのセリフ。こんなセリフ、昨今のアニメで使ってしまったら「ナルシストの中二病発言」になってしまいます……シェイクスピアだからこそ許されるベタな詩的表現、と言えるでしょう。
What light yonder window breaks? It is the east, and Juliet is the sun.
これが原文です。yonderが見慣れないですね。これが「古語」です。「あそこの」「向こうに見える」といった意味合いの単語です。見慣れた表現にするとしたら
What the light over there?
と言ったところでしょうか。続くwindow breaksは「窓からこぼれる」を表現しているのですね。直訳すると「窓を壊す」になってしまうので、これは訳者の力量が試されてしまいます(笑)
ちなみに、in the eastという表現。よく学生さんたちが間違える表現です。例えば、「太陽が東から昇る」という文を英語にしなさい、と出題されたとき、学生さんたちは
The sun rises from east.
としてしまうのですね。正しくはThe sun rises in the east.です。ここで重要になってくるのは「方角の捉え方」です。
まず、「方角」はそこ一か所しかありません。「東の方角」は「こっち!」と特定されてしまうのです。ですから、theが必要になり、the eastと表現します。
そして次に、前置詞は必ずinを使います。これは、ネイティブは方角を「空間」と捉えているからです。日の出が、東という方角の空間の中で起きている現象、というイメージです。ですので、いかなる場合にも方角に対する前置詞はinになるのです。
ちょっと横道にそれてしまいましたが……それを理解した上で、もう一つのロミオのセリフ(原文)を見てみましょう。
「ほら、あの東のほう、ちりぢりの雲をつなぎ合わせるのは嫉妬深い光の筋」
夜が明けてしまうからもう行かなくちゃ……と告げるロミオのセリフ。このあたりは「ひばりが鳴いたから(夜明けなんだ)」「嘘よ、ひばりじゃないわ、ナイチンゲール(という鳥の種類ですね)よ」といった感じの、鳥の名前を使ったやり取りが続きます。どんな鳥がどのタイミングで鳴くのか、という知識が必要になる、いわば教養が必要になるシーンです。
さて、このセリフを原文で見てみましょう。先ほどの「方角の捉え方」に注目です。
Look, love, what envious streaks. Do lace the severing clouds in yonder east.
in が使われていますね。
ジュリエットに対する「ほら」という呼びかけを「Look, love(見てごらん、愛しい人よ)」とするのはカッコいいですね。これがまだ少年だというキャラ設定なのだから、憎いったらありゃしません(笑)
「我が恋人に乾杯!」
さぁ、来ました、ロミオが毒を飲むシーンです。「乾杯」はa toastやCheers!、それからBottoms up!などの表現がありますが……
Here’s to my love!
と言っています。このHere’s to~という表現が、「~に」乾杯、と相手を入れてあげることができるものなんですね。
このあと、ロミオは毒を飲み干します。そのあとのセリフもとても印象的ですので、見てみましょう。
「おお、嘘はつかなかったな、薬屋!おまえの薬はよく効くぞ。こうして口づけをして死のう」
毒をくれた薬屋に言及しているあたり、英語の世界観と言うか、日本にはない世界観ですよね。
原文には、ここまでで紹介してきた表現がたくさんあります。もうここまで読み進めてくださった皆さんなら理解できるはずですよ。
O true apothecary! Thy drugs are quick. Thus with a kiss I die.
apothecaryはやや古い表現ではありますが「薬剤師」という意味の単語です。まさに「薬屋!」といったところですね(笑) ちなみに、現在ではpharmacistという単語が一般的です。
thyはもうおなじみになりましたyourですね。thusもそれの仲間か?!と錯覚してしまいますが、これは現在でも使われている「このように」とか「したがって」という意味の単語です。今回は前者の意味合いで捉えましょう。
この後、ロミオが死んでいることに気が付いたジュリエットは嘆き悲しみ、後を追います。
「私を殺して。あなたのキスで。あなたの唇、あたたかい」
毒を全て飲み干してしまっていたロミオ。その唇に毒が残っているかもしれない、と考え、ジュリエットはキスをします。
To make me die with a restorative. Thy lips are warm.
restorativeは「回復させる」とか「復活の」などといった意味を持つ形容詞ですが、名詞としては「健康食」「強壮剤」、やや古い表現であれば「酒」といった意味もあります。
今回は、「ロミオの唇に残った毒」が「効果を復活させてくれる」という意味合いでこの単語をチョイスしているのかもしれません。まああくまでも私の予想ですけどね。
それにしても、死ぬために、と言っているのに「回復」という意味合いを持つ単語を合わせてくるあたり、シェイクスピアの言葉のセンスには脱帽ですね。
あとがき
いかがでしたでしょうか。今回は名作「ロミオとジュリエット」に登場するセリフの原文を見ながら、古語や方角の捉え方をご紹介してみました。
この作品は、他にもロミオの親友・マキューシオとの関わりや、キャピュレット婦人(ジュリエットの母親ですね)の甥・ティボルトとの決闘、神父・ロレンスの温かさなどなど、見所がたくさんあります。何気に、ジュリエットに出会う前にロミオがロザラインという女の子に片思いをしていたあたりも面白かったりします(笑)
ぜひ作品にも触れてみてくださいね。
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